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第6話 父を知る叔父の前で、私はCEOの妻になった

last update publish date: 2026-09-23 12:34:24

第6話 父を知る叔父の前で、私はCEOの妻になった

「リチャード・ハートという男だよ。優秀な会計担当者だった」

 父を横領犯として処理した会社の副会長が、父をそう呼んだ。

 十二年前、新聞や経済誌に並んだ言葉はもっと冷たかった。巨額横領、不正送金、背任疑惑、内部統制を欺いた巧妙な手口。父が亡くなったあとでさえ、記事の中の父は人間ではなく、企業犯罪を説明するための便利な固有名詞として扱われていた。

 それなのに、ヴィクター・ヴァレンタインは「優秀だった」と言った。

 私はエイドリアンとつないでいた手に力を入れそうになり、寸前で止めた。

「父をご存じだったんですか」

 できるだけ普通に尋ねたつもりだった。

 ヴィクターは私の顔を見つめたあと、少しだけ懐かしむように目を細めた。

「やはり、リチャードの娘さんだったのか。姓を聞いたとき、まさかとは思ったんだがね。当時、彼はグループ傘下の会社で経理を担当していて、本社側との会議にも何度か出ていた。数字に強いだけではなく、相手が上役でもおかしいと思ったことははっきり言う人だったよ。ああいう人間は、経理部門では貴重だ」

「ずいぶん高く評価していらし
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